2012/11 スイス・オーストリア-未来の住宅にふれる旅

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住宅の未来を訪ねる旅を重ねている、

スイス・オーストリアの住宅や暮らしに未来を感じ、ここ数年間は毎年取材を重ねている。

今年はゼロエネハウス、再生可能エネルギーと日常的に使っているキーワードであるが、スイス・オーストリアではどのように定義されているのか取材に当たった。又東北で高性能住宅の普及を願って活動している若い仲間と僕が先進地とイメージしている地に同行したいと視察の企画を進めた。

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コーディネート・ガイド・通訳と多才な能力の持ち主、滝川薫さんにお願いした。参加メンバーはそれぞれテーマを持ち取材に当たった。

 

ゼロエネルギーハウスと再生可能エネルギー

滝川さんからの事前情報ではスイスの場合、2020年にNZEB(二アリーゼロエナジービルディング)が義務化されるため、次の州のエネルギー法ひな形でゼロエネルギーの定義が出てくることになっていて、今、パウリさんたち(州のエネルギー専門官会議)が一生懸命準備作業をしています。一応、熱は100%電気もほどほど自給というものらしいのですが。来年に公開される予定ですが、どんな形で出てくるのかまだ分かりません。そのため、今月中にベルン州のエネルギー専門官のところに行って、いろいろと取材しようと思っています。

 ただ、スイスのNZEBの一つの方向性を示すのが、ミネルギー・A基準です。とはいえミネルギー・A認証を受けるには熱供給エネルギー(換気も含む)の自給のみで、家電の消費エネルギーをゼロ化する必要はないことになっています。

設備は太陽熱温水器+木質バイオマス、太陽熱温水器+太陽光発電+ヒートポンプ、太陽光発電+ヒートポンプという選択肢があります。躯体の性能は、気密性能はミネルギー・P、断熱性能はミネルギー以上で、これはその建物の持っている屋根や敷地で生産できる量に応じて、ゼロ化できるレベルに断熱するというものです。

ベルン州ではプラスエネルギーハウスの助成を行っています。条件は躯体のレベルがGEAKでレベルA、あるいはミネルギー・Pかパッシブハウス基準の認証を受けていること。この場合は、建物で家電・暖房・給湯・換気以上のエネルギーを生産することが定義です。

以上の事前情報を元に設計者はどう理解しているか、又取材先のフォーアールベルク州エネルギー研究所の見解も知りたいと臨んだ。

 

Energieinstitut Voralberg  Hr.Gmeiner氏に取材                                                                    Q:ゼロエネルギーハウスの定義はあるか?

スクリーンショット 2013-11-03 16.53.31Hr.Gmeinerさんは、建築生態学、建築生物学の専門家。
EUに大まかな定義はある、消費と生産のバランスで決めているため、エネルギー消費の大きな建物でも太陽光発電パネルを大量に乗せれば達成できてしまう。それは、経済的、エコロジー的そして持続可能でもない。

エネルギー研究所ではプラスエネルギー住宅、エネルギー自立住宅を進めようとしている。2009年の州議会で2050年までにエネルギーの自立を決議した。現状のエネルギー消費を各分野(産業・交通・建物)で60~80%の削減が必要となる大きなチャレンジを州として進めている。建物のエネルギー性能ばかりではなく、建物の製造時のエネルギー、日常的交通手段、学校・幼稚園・商店が近くにあるか、カーシェアリングの配置、公共交通網を使って徒歩で生活できるか等を評価しエネルギー自立に向かっている。

フォーアールベルク州ではBUILDING ECOPASSのチェックシートを使い、躯体の効率、エコロジー的品質を中心にエコポイント評価し補助金を決めている。

  1. 躯体・Passivhaus基準と同じ高性能
  2. 熱需要・・・最終エネルギー消費量
  3. 一次エネルギー消費
  4. Passivhausの建物用途別目標値の条件を満たす事・・Passivhausは高性能外皮
  5. エネルギーの高効率利用
  6. 建材の高効率利用
  7. 室内空気質

Minerugie、Passivhausに補助金を出しているわけではなく、BUILDING ECOPASSのエコポイントに応じて補助金を出している。エネルギー自立住宅は建築時に使用されるエネルギーと80年(寿命)で消費する運営エネルギー量で断熱の種類や厚さを建築家は適正に選ぶ必要がある。

ここで問題は、それぞれの材料の計算に必要な原単位があるか?その計算や申請は煩雑になるのではないかという危惧である。解決策として、エネルギー研究所が運営するWeb上のデータベースBauBookがある。現在2500アイテム以上の建材が登録されており日々更新されている。

特徴は法的拘束力のある申請をクリアーするとその材料(アイテム)はBauBookに登録され建築物理特性、エコロジー的値、安全基準、品質基準、購入窓口などの情報を知ることが出来る。これは補助金の申請書にも直接使用できるので申請業務の簡略化にもつながっている。

ゼロエネ住宅のさらなる上(プラスエネルギーハウス、エネルギー自立住宅)を目指しており、原単位の整備、補助金の整備、民意の立法化など具体的、実践的に進めている。

***** Energieinstitut Voralberg (フォーアールベルク州エネルギー研究所)

設立20年来、建物のエネルギー効率向上、エコロジー的建築の普及を推進。再生可能エネルギーの利用促進に関する研究、提案活動にも焦点を当ている。環境建築、持続可能な交通政策にも警鐘を鳴らしている。建築家、業界、ユーザーに対して中立な第三者として公平なアドバイスを行っている。対象として、フォーアールベルク州の住民、建築デザインに関わる建築家、エンジニア、職人、地方自治体、事業者等

****** BauBook

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Web上のデータベースで、セントラルといわれるエネルギー研究所が直接運営しているモノと地方版がある、現在ベルギーでフランス語版を開発中。

 

 

 

****** IG Passivhaus Schweiz(スイスパッシブハウス振興会)*********************************会長・建築家ホーネッカーさんの意見:  Minerugie住宅にPV(太陽光発電)を搭載すればゼロエネハウスになるのは理解出来ない。躯体性能は最低でもPassivhausにすべき。

******* BUILDING ECOPASS********************************************************************            A4サイズ3ページのチェックシートがあり、エコポイントが計算できる。エコポイントにより補助金のコースが決定される。法的拘束力のあるデータベースBauBookとリンクして使用出来るよう配慮されている。

長土居の印象——-ゼロエネハウスの定義はあるかと問うと答えはYESと返された。

しかし、それぞれの立場で微妙にニュアンスが異なると理解した。躯体性能をそこそこにして、大型の創エネシステムを搭載するか?高度な省エネ住宅(パッシブハウスレベル)に小さな創エネシステムを搭載するかご当地でも議論が絶えないようである。IG

Passivhaus Schweiz(スイスパッシブハウス振興会)会長・建築家ホーネッカーさんの意見では、Minerugie住宅にPV(太陽光発電)を搭載すればゼロエネハウスになるのは理解出来ない。躯体性能は最低でもPassivhausにすべきは的を射ていると思う。

日本での論点に類似しているが、建物性能がQ値換算すると0.7W/㎡K以下にした上で、ゼロエネハウスの議論でレベルの違いを感じる。

又、計算根拠の原単位を公的な機関がWeb公開しオープンにしている。補助金制度の条件を簡単・明瞭に示し、説明会も中立機関のエネルギー研究所などが丁寧に行い普及する事、実銭する事を第一にしている。日本の制度にも類似した、LCCM、低炭素社会・・・等があるが、原単位が無料公開されていない、補助金の申請は複雑で申請する場合の事務処理負荷が増大するなど課題は多い。

Q:再生可能エネルギーの定義はあるか?

エネルギー研究所では総システム評価をしている。ヒートポンプCOP、バイオマスエネルギー(木質・燃料)、ソーラーなど疑問があるモノもある。資材はどこから来たのか由来や持続可能な方法で生産されているかが問題である。ヒートポンプ利用に関する補助金はJAZ4以上で無ければ適用されない。(技術的最低基準)ヒートポンプで使用する電力を太陽光で発電するとBUILDING ECOPASS評価は高い。

木材に関して、西ヨーロッパでは森林法で持続可能な森林経営が営まれて居ることを前提として、再生可能エネルギーとして扱われる。ヨーロッパ材以外では持続可能な生産がされておらず、人権問題、社会的問題、環境問題が問題視されているので、FSC認証とCOC認証(生産→販売)は必須となっている。又ヒートポンプ品質協会、ペレット品質協会がそれぞれの地域の品質保証を行っている。

*****再生可能エネルギーの定義は法律やそれぞれの協会の中で定義されており、基準が満たされれば補助金を受け取れる。

義務化の最低基準と任意の補助金付きの基準の間で市民は選択の自由がある。又補助金を受け取るために、事務処理が増大したり煩雑化することを極力避けるため、公的データのWeb公開や制度の説明を丁寧に行っている。

一寸驚きはJAZ4以上である。

*****JAZ  Jahresarbeitszahl (≒SPF)COPと年間COP(JAZ)についてCOPは製品のみに関わる係数で、JAZは建物全体を考慮に入れる係数です。JAZは実際の一年の稼働条件下で測られる。計算上も算出できるがユーザーの使用方法で大きく異なるため、実際と計算結果では大きく異なる場合が多い。実際の建物でのJAZは循環ポンプの電力消費量も考慮されるスイスの中でもJAZについてはオフィシャルなモノで、3っの異なる計算方法(最小限のもの、中間のもの、最大のモノ)がある。ヒートポンプ周辺のモノと建物全体のモノが存在する。

***** GEAK***************スイスのエネルギーラベル改修補助金の基礎にもなっている。

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電力会社のエネルギーアドバイザーの取材も興味あるものだった。

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Q:電気ヒータからヒートポンプへの交換など進んでいるか?

電気ヒータ(蓄熱式も含む)はスイスの多くの州で禁止になっている。しかし、電力会社として昼夜のピークシフトが難しいという問題がある。ヒートポンプ普及はエネルギー効率の点で当然の方向だが、蓄熱式は昼のピークを抑えてきたがヒートポンプが増えると短期的にはピーク出るため調整が難しくなる。今までも、貯湯タンク容量が小さいためピーク時にヒートポンプが動く問題があった。

最終的にはエネルギー効率の良い方法に進むとは考えているが昼のピークが増えるのは、現状の課題である。2013年夏からベルン市では、新しい法律が施行される。

ヒートポンプの蓄熱タンク付きが義務化される。既に、電気暖房、蓄熱暖房機、電気温水器はピークの11時-12時には使用してはならない法律があり、それらの回路の電源が切られていた。それに、ヒートポンプ (暖房も給湯も同じ扱い) が加えられると言うことで、ピークの1-2時間をまかなう貯湯タンクを装備する事が義務化となる。

電力会社のコマンド、電力会社は50Hz以外の波長を使って送電線から8-10のコマンドで需要家の配電盤を制御している。街灯、ボイラー、電気暖房を時間帯別にコントロールすることが出来る。

消費者は特に何もしなくても、個々のサーバーが配電網から指令を受けて時間制御などを行っている。ヒートポンプの内部に発停の受信機が有るわけでは無い、この制御装置は電力会社の所有物になっている。

このコマンドをを受けてヒートポンプはピーク時間の1~2時間停止するので蓄熱タンクの義務化が生まれると言うことのようである。

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